2014年4月8日火曜日

ウサグルミ

彼女はアルバイト中だ。
この仕事はとても時給が良い。
この病院には年老いた芸術家が長い間入院しており
手が無く耳が長い枕のようなものを毎日作っている。
そして廊下に置いておく。
彼女の仕事はそれを夜中に回収して
美術館の倉庫に運ぶ事。
今日は4つ置いてあった。
そのうちのひとつがとても抱き心地がよく
大きさもそのまま抱えて帰りなさいと
言われるような大きさだ。
彼女は迷う。
このまま持って帰ってしまおうか。
彼女は知らない。
何人もの前任者がそれを持ち帰ってしまったゆえに辞めさせられたことを。
誰もが持ち帰ってしまいたくなるがゆえに美術館が収集していることを。

0 件のコメント:

コメントを投稿